静岡市近郊の陸産貝類

大貫 貴清

最終更新日:2007年9月19日



 雨上がりになるとカタツムリやナメクジなどが壁や木の幹などに出て来るのを皆さんも見た事があると思います。カタツムリやナメクジの仲間は全て陸で生活する貝の仲間です。

 陸産貝類は移動力に乏しいので地域ごとに様々な種類に分化しており、静岡県内だけでもおよそ130種程度が記録されています。静岡県での陸産貝類の研究の歴史は古く、下田にペリー提督が来航した際に採集されたシモダマイマイが記載された事から始まり、以降多くの研究者によって調べられてきました。

 静岡県は東西に長くまた地形も多様な為、様々な陸産貝類が生息しています。今回は静岡県の中部に位置する静岡市近郊の陸産貝類に関して紹介したいと思います。

 静岡市は市街地に山地が接している場所が多く少し足を伸ばすだけで様々な種類の陸産貝類を目にすることが出来ます。

 まず市街地では、オナジマイマイやウスカワマイマイ、チャコウラナメクジといった全国どこでも見られる種類が多くいますが、神社や樹木の多い公園の周辺ではクノウマイマイという大型のカタツムリを目にすることが出来ます。このカタツムリは静岡市近郊では割と多く目にすることが出来ますが、大井川以東から沼津市付近まで範囲の海岸地域を中心に生息しており、他の地域では見ることが出来ません。

 また神社や樹木の多い公園の落ち葉や朽木をひっくり返すと、ヒクギセルやヒカリギセルといったキセルガイとよばれる細長い殻をもつ陸貝の仲間を見つけることができます。

 少し山に入ってゆくと、川沿いの広葉樹の幹にハコネマイマイという白い地色に黒い帯の美しいカタツムリを見ることが出来ます。また前述のクノウマイマイに良く似ていますがより平たく角が張っているヒラマイマイというカタツムリもいます。

 また下草が生えているような場所ではニッポンマイマイやベッコウマイマイの仲間も見る事ができます。

 さらに森の奥深く、沢沿いの広葉樹が多く見られる森ではオオケマイマイという毛の生えたカタツムリやオオトノサマギセルやオクガタギセルといった前述のキセルガイの仲間でも大型の種類が生息しています。またミヤマヒダリマキマイマイやミノブマイマイといったカタツムリもこのような自然度の高い場所で見ることが出来ますが、この2種は全国的にも非常に珍しいカタツムリです。

 またイボイボナメクジという非常に稀な陸貝も静岡市近郊の山地に生息しています。この陸貝はナメクジという名前が付いていますが、所謂ナメクジの仲間ではなく、また肉食性で他の陸貝を襲って食べるという変わった生態を持っています。全国的に生息しているようですが、発見例が少なく詳しい生態や分類が未だに分かっていません。

  

 このように静岡市は市街地から割と近くでも珍しい陸産貝類が生息する恵まれた場所ですが、その分開発される危険も多く生息状況は楽観視出来るとは言えません。特に近年市街地付近に生息するクノウマイマイやヒラマイマイ等身近な種類が以前に比べ少なくなったような気がします。去年まで沢山いた場所でも次の年にはほとんどいないという事もよく経験します。

 みなさんも身近で大きなカタツムリを見かけたらそこはまだカタツムリが生息出来る環境が残されている場所であるということです。少し気を付けて見てみるのも面白いかもしれません。


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登録日:2007年9月19日


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