カラーコラム


最終更新日:2007年9月20日






静岡県の植物(6)

トキワマンサク

杉野 孝雄

 トキワマンサクを漢字で書くと常磐満作、常磐は木の葉が常に緑で色を変えないことで、その名のように常緑のマンサクです。早春に黄色の花が開くマンサクは、マンサク科のマンサク属Hamamelisに所属しています。トキワマンサクの花は似ていますが、常緑であること、花期が4月でマンサクより遅く、淡黄白色の花が枝の先に6〜8個集まって着くこと、萼筒の基部に包葉も托葉もないなど多くの違いがあることから、別属とされLoropetalum chinense (R. Brown)Oliverの学名がつけられています。属名のロロペタルムはギリシャ語のloron(革紐)とpetalon(花弁)の複合語で、長さ約15mmの線形の花弁の様子に由来しています。この属の植物は日本、中国、ヒマラヤ東部に3種ほど知られています。

 珍しい木で静岡県内では1箇所、湖西市神座に80本ほど群生する生育地があり、「トキワマンサクの北限群生地」として、静岡県の天然記念物に指定されています。国と静岡県のレッドデ−タプランツでもあります。日本では静岡県以外には、三重県の伊勢神宮宮域の前山と熊本県の小岱山に知られているだけです。

 栽培の容易な植物で挿し木でもよくつきます。自宅の庭では挿し木で殖やし垣根に使っています。根は長く伸び地表に出るとそこから芽を出し成長もします。静岡県、三重県、熊本県、中国とたどっていくとフオッサ・マグナ要素の一つとも考えられますが、三重県の産地は伊勢神宮宮域内。熊本県小岱山の産地は「熊本県植物誌」(1969)では、生育状況から野生化?とされ、自生でない可能性も指摘しています。ところで、静岡県の産地も林内を踏査すると、シデコブシがあるなど植栽または栽培からの逸出の可能性も捨て切れません。DNA分析などでその由来が明らかになるとよいのですが。

 最近は中国から変種の花が赤色のアカバナトキワマンサク(ベニバナトキワマンサク)が導入され、庭などに広く植えられていてこの方が一般的です。トキワマンサクの発見史などについては、杉野孝雄「トキワマンサク雑記」(1979)遠州の自然4:67-68を参考にしてください。


静岡県の哺乳類(6)

カヤネズミ

三宅 隆

 体長約6cm、尾長約7cm、体重は10g前後。子供の手のひらの中にすっぽり収まってしまう程、小さい、小さいネズミ、それがカヤネズミです。

 このカヤネズミ、とても面白い習性を持っています。鳥のように球形の巣を作るのです。

 ススキやアシなどの地上1m位の所に、初夏から夏にかけて、草の葉を裂いて丸い球巣を作り、この中で、子育てするのです。

 カヤネズミの生息地は、草原や湿地帯。普段は地上付近で生活するのですが、子育ては、この球巣の中で行うのです。

 数十年も前の話ですが、鳥の空巣と間違えたようで、カヤネズミの巣が動物園に持ち込まれたことがありました。中には、生後数日と思われる子が6匹も入っており、飼育していたハツカネズミを仮親にして育てさせることとしました。子育て中のハツカネズミに、カヤネズミの子を混ぜるのですが、そのままだと殺してしまう恐れがあり、ハツカネズミの尿の臭いをこすりつけて自分の子供と間違えさせ、無事育てあげさせました。

 静岡県版レッドデータブックの調査では、このカヤネズミも対象として県内での生息地を探し回りました。しかし、確認された地点は、巣の痕跡を含めても、県内でわずか16箇所のみ。湿地帯の開発による減少、多くの河川敷での公園化やグラウンド化などによる草地の減少など、生息可能な場所が減少していたのです。そのため、カヤネズミは存続基盤が脆弱な種として、現在は絶滅の恐れはないが、生息・生育条件によっては絶滅危惧として上位ランクに移行する要素がある、準絶滅危惧種に指定されました。

 これからも、カヤネズミの調査を続けていくつもりですが、この小さな可愛い隣人が、いつまでも生き残れる場所を確保してあげるのが、ヒトとしての責務ではないでしょうか。




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登録日:2007年9月18日


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