施設見学と自然観察会報告
「バードピア浜北」と県立森林公園

土屋たかみ

最終更新日:2007年9月20日



  

 11月21日(日)、秋晴れのもと、東京から参加してくださった会員をはじめ30名が、森林公園ビジターセンター「バードピア浜北」に集合しました。

 平成16年3月26日にオープンした「バードピア浜北」は、自然と人との「共生」を基本理念に3年をかけて整備され、鳥類を中心とした自然情報の発信や四季折々の新しい情報を提供し、また森の自然を体験・学習することもできる施設で、施設自体も環境に配慮した造りになっています。

 センターの屋根全体には芝が張られ、屋根に降った雨水は施設内部のトイレや屋外の散水に利用されています。南側の屋根には太陽光発電装置もあり、施設で使う総電力の約4%を補い、自然採光・自然換気を導入し、天竜杉など県産材を使用しています。

 玄関を入ると広い展示ホールには、床面に張られた県西部地区の航空写真と円形の枠の中に入った公園周辺の模型のある「情報ゾーン」があり、自然観察に必要な情報を得ることができます。「観察ゾーン」には長い観察テラスがあり、観察ポイントや方法を体験できます。「体験展示ゾーン」では、木の香りや鳥の声などを学べたり、体験ジオラマでは森の一日を映像で体験できます。「創作展示ゾーン」では、公園利用者が写した写真や絵画の展示スペースとなり、当日は浜松在住の西村幸近さんによる「透明水彩・野鳥画展」が開催されていました。20年間に及ぶ観察経験による絵は、繊細であると共に色彩がとてもすばらしいものでした。「体験展示ゾーン」に続く展示室には杉野孝雄先生の植物標本を見ることができ、森林公園の自然観察ガイドブックの著者の一人でもあります。

 「バードピア浜北」で森林公園に関する情報を得たところで、観察会に出発しました。豪華な顔ぶれの各専門の先生方(杉野孝雄(植物)、高橋真弓(昆虫)、諏訪哲夫(昆虫)、 三宅 隆(野鳥))が講師となり、「小鳥の道」を通り「うぐいす谷親水広場」、「西ノ谷奥池」、「スポーツ広場」を目指しました。

  

 アカマツ林の中、低いところにはウラジロやコシダが茂りリョウブ、タマミズキ、モミジバフウ、イロハモミジの黄色や赤色の紅葉がすばらしく、「うぐいす谷親水広場」付近ではオオアオイトトンボ、マユタテアカネ、ヤマトシジミ、ツマグロヒョウモンが観察できました。途中遊歩道周りで土が盛り上がっている所が多く見られたのですが、イノシシによるものと教えていただきました。

 「スポーツ広場」では、ノウサギの糞をたくさん見ました。自分ひとりでは気が付かなかったと思います。「西ノ谷奥池」では、マガモがゆったりと泳いでいました。また、落ち葉の広がる土の上を歩くビンズイや、木の実を食べているアオゲラを東屋から観察しました。

 「スポーツ広場」の周囲には、西洋トチノキの黄色に紅葉した木がたくさん見られたのですが、フランスで「マロニエ」と呼ばれている木と同じことを初めて知りました。

 昼食後は「いこいの道」、「花木の道」、「森林公園会館」前を通り「木工体験館」までの散策をしました。途中遊歩道脇に湿地があり、「トウカイコモウセンゴケ」、「サワシロギク」を教えていただきました。湿地の植物は、湿地がなくなると絶えてしまい、今各地の湿地がどんどん減っているので、なくなっていく湿地の植物をふやす試みが、森林公園の湿地で行われています。

 散策に少し慣れ、「モミジバフウ」のきれいに紅葉した葉をバッグのポケットに飾る人や手に持って歩く人もいました。

 「木工体験館」では、地元産のスギ材やヒノキ材を使って木工作をしていましたが、指導員の大都さんがヒノキ材で作製した鳥の模型は、本物そっくりで足の細部にいたるまで丁寧につくられており、100体位あるのには驚きました。
庭では、子供たちの手からヒマワリの種を食べに来るヤマガラに出会いました。こんなに身近に自然を感じ、楽しむことができることは本当にすばらしく、気分が爽快になった一日でした。

 森林公園は、215haの県営林の中、1,000種以上の植物や約100種の野鳥が確認され、チョウやトンボなどの昆虫も豊富に生息しています。

 今回の散策路はほんの一部なので、是非機会を見つけてまた歩いてみようと思いました。

 森林公園には、長さ150m、高さ48mの大きなつり橋があります。「空の散歩道」と名づけられ、まさに空の中を歩くようなすばらしい眺めです。お天気の良い日に歩くことをお勧めします。

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登録日:2007年9月20日


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