静岡県の三角点(2)
高 根 山

輿石 邦昭


最終更新日:2005年9月25日



 標高150.9mの高根山(たかねさん)は、大井川下流の右岸域に広がる牧ノ原台地の支脈である高根丘陵にある。この丘陵は、古大井川の氾濫原が隆起してできた台地を坂口谷(さぐちや)川と勝間田川が開析して形成されたものである。高根山の西斜面は砂利の採掘によって大きく変容しているが、東方からの眺めは平野部から140m近い高度差をもったなだらかな東稜が緑の林で覆われていて美しい。

 高根山へのルートは、車なら、国道150号線榛原警察署入口より県道73号線を北北西に約2.5km進み、東名高架橋の手前を左折、約600m東名沿いに走って高架橋を潜る。次に丘陵沿いの道を約600m進むと高根山の案内標が出ているので、ここを左折して農道を約900m進めば駐車場に到着する。

 駐車場からは谷沿の道を歩き、お茶畑を抜けて雑木林の急坂を30mほど登ると山頂に出る。山頂には平安時代末期(1166年)に大和国三輪神社から勧請されたとされる白山神社の祠が建てられている。この祠と鳥居の前の空き地に一等三角点標石(点名:坂部村、本点番号160)が埋設され、さらに、その南約7mの所にコンクリート製の天測点第18号標石が埋設されている。天測点とは三角測量による誤差を補正するための天文経緯度(天文観測による絶対位置)を求めた点で、全国には48点設置されており、静岡県では高根山だけである。

 三角点と天測点のある山頂からの見晴らしは雑木が繁っていてあまり良くない。しかし、鳥居から東稜の下り約500mの間は、尾根の所々で雑木が伐採されており、駿河湾に突き出た御前崎が眼下に見下せ、遠く伊豆半島や富士山、南アルプスが眺望できる。雑木に囲まれた痩尾根を下りながら、時々開ける視界では、しばし立ち止まってしまうほどの素晴らしい眺めである。林を抜けてお茶畑の中を下ればそこは先の駐車場である。歩行時間は、上りが15分、下りが30分ほどである。昔は、この高根山東稜上の古道は参拝や遠足などで多くの人に利用されていたが、最近では山頂近くまで農道の整備が進みこの道は使われなくなり、藪化が進み、ついに通行不能となってしまった。そこで、「郷土の一等三角点を愛する会」等によって、古道は50年ぶりに元の姿を甦らせた。そのことは新聞などにも紹介された。

 道々、雑木の中に榛原町を代表する榛ノ木(ハンノキ)がみられ、普通は平地(湿地)に生える木なのに林の中で、しかも平地のものより一廻り大きい木ノ実を付けているのが観察できる。


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登録日:2005年9月25日


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