来年度以降の標本保存事業と博物館構想
−博物館準備室的な役割をもつ県の組織を早急に−

事務局

最終更新日:2004年9月21日



 8月11日に本NPOでは、来年度の自然学習資料保存事業や今後の自然史博物館設立について、県の企画部長と懇談しました。今年度で終了する自然学習資料保存事業を来年度もなんらかの形で継続したいということについては相互に合意したものの、博物館設立に向けての準備室づくりについて県としてはまだ現実的なものになっていないという意見でした。ここでは、これまでの博物館設立に向けての県のとりくみの経緯と、静岡県立自然史博物館設立に向けての私たちの提案を簡単に述べます。

 静岡県では、平成元年度より県立博物館整備に向けた検討を実施してきましたが、平成6年度に自然系博物館整備の方向性を示し、翌平成7年度に策定した静岡新世紀創造計画において自然系博物館整備を主要施策のひとつとして位置づけました。平成7年度以降、そのための資料・文献等調査(平成8年度)、資料情報収集等調査(平成9年度)、バーチャル技術等活用検討調査(平成9年度)、標本評価(平成9〜12年度)、自然学習・研究機能調査検討事業(平成13〜14年度)などいくつかの調査および検討がされてきました。そして、平成15〜16年度には自然学習研究資料保存事業が行われています。しかし、現在に至っても県として自然系博物館整備のための具体的な施策決定がほとんど行われていません。

 私たちは、来年度以降の施策について以下のような提案をします。

(1)資料保存事業の継続

 現在進行中の自然学習資料保管事業は、貴重な標本資料を県が適切に保管し、これらを学習・調査・研究に活用することとなっています。しかし、この事業は2年度限りのものであり、現時点では継続性が保証されていません。しかし、今後もこの事業を継続的に行う必要があり、またこれを適切に登録保管しなければなりません。そのためには、恒常的なしかるべき保管場所(設備)と整理・保存作業を行う専門的な人員を少なくとも3名(動物・植物・地質の分野)程度は確保する必要があります。

 現在、保存事業を実施している県教育委員会三島分室の一部では、保管場所が不足していることと、NPO自然博ネットの会員がボランティアで資料登録や整理するためには遠距離にあることなど問題点があり、今後早急に適所に保管場所を移す必要があります。

(2)自然史博物館設立準備室の設置

 自然史博物館の設立には相応の準備期間が必要です。そのためには、来年度にも準備室を設置して、あるべき理想の構想を実現化する方向に持っていくべきであると考えています。この準備室は、現在収集・保管している自然史資料を系統的に収集を行い、県下の自然史に関する調査・研究を開始する目的をもっています。

 先のレッドデータブックの作成でもこのような体制ができていれば、調査の実施や結果のとりまとめなどに関してより効果的に働いたと思われます。しかも、このレッドデータブックの基になった調査資料についても、資料の保存とさらに資料の蓄積が必要です。

(3)自然史博物館設立構想

 静岡県立自然史博物館は、県民の基本財産である県下の自然に関する調査研究を軸として、その成果を県政や県民のために役立てるとともに、県民の自然環境に対する知的活動を支援する場としたいと考えています。自然学習・研究機能調査検討会がまとめた「静岡県における自然学習・研究機能のあり方」に示された自然系博物館の二段階整備計画と同様に、第一段階として展示は最小限に押さえ(メインホールとイベント展示室程度)、標本資料等の収集保管と調査研究機能を優先して行い、県民や他の機関との連携・交流を深めるための場としての研究センター(博物館)を設立し、第二段階としてその研究センターが核となり、教育・展示など機能を一体型にした自然史博物館を構想していきたいと思います。


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登録日:2004年9月21日


NPO 静岡県自然史博物館ネットワーク
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Network for Shizuoka Prefecture Museum of Natural History