アピール
県立自然史博物館の早期実現を!

発行:2000/9/01

伊藤二郎  県立自然史博物館設立推進協議会実行委員会代表)


 平成12年7月11日の静岡新聞朝刊は、静岡県が「快適空間しずおか」の創造に向け、県の各部局が取り組む「戦略的政策展開」のための13年度知事方針書を明かにしたことを報道した。そのテーマは「本家・本元づくり」とNPO(民間非営利団体)などとの「協働(コラボレーション)」の二つであり、今後このテーマを基に部局長方針書を作成した上で具体的施策を検討し、協議の整ったものについては来年度当初予算などで重点的に取り組むとのことである。さらに知事方針書では施策検討の視点として、@先進性を発揮して全国のモデルになるもの、人や情報の集積をうながす求心力の高いもの、A過去のデータに縛られず、現状の中に未来の芽を見出す姿勢、B10−20年先を見据えた中長期的な視点などを挙げていることも報道している。

 県立自然史博物館の設立はまさに上記の方針に合致したものではなかろうか。本県の総合計画である「新世紀創造計画」(1995年〜2004年)に位置づけられたものの、財政上の制約のために具体化が大幅に遅れている「自然系博物館の整備」の早期実現を求めて、私たち県内民間研究団体・個人有志は「県立自然史博物館設立推進協議会」を結成(1995年)し、他府県の自然史系博物館の見学・調査(10回)、自然史系博物館研究者による講演会の開催(5回)、それらを踏まえた県知事宛要望書の提出(2回)、提案書の提出(3回)、自然史系博物館関連情報を主とする機関誌「自然博推進協通信」の発行(16回)のほか、県内環境情報(標本・資料)の所在調査やその評価に関わってきた。さらに昨年8月には「ミニ博物館 しずおかの自然」(静岡市:朝日テレビ青葉ビル)および「こどものための野外観察会」(5会場)を開催し、その発展としてガイドブック「しずおかの自然」(A5版約200ページ)の今秋発行をめざしている。

 これまでの検討を通じて、私たちが提案書として知事および関係部局に提案している自然史博物館は、静岡県を中心とする「多様で豊かな自然の歴史と現状」や「多彩な動植物と人々の関わり」に関する貴重な情報(標本・資料)の収集・整理・保全を図るとともに、調査・研究を通じて得られた成果を多様な方法で積極的に情報発信し、県民および国内外の人々と共に「自然との調和や共生」について学習・交流を深め、21世紀の地球人として主体的に活動できる調査研究・情報発信・学習交流センターである。

 この提案書は平成13年度知事方針書で述べられている3つの視点に合致しているばかりでなく、「本家・本元づくり」・「非営利団体との協働」の両テーマに深く関わっており、「新世紀創造計画」に位置づけられている「自然系博物館の整備」をより具体化したものである。知事および関係部局は非営利の民間研究団体・個人が手弁当でまとめた構想案をぜひとも参考にされ、21世紀の環境問題を共に考え行動する国内外の人々の学習・交流の場として、多様な環境情報が収集・整備・蓄積されより豊かな形で世界に向けて発信される創造の場として、しかも「快適空間しずおか」の拠点として愛され、幅広く活用される自然史博物館が早急に整備されるよう切望し、その実現を強く求めるものである。


通信17号の目次へ

 top へもどる

登録日:2001年4月16日